デイサービスセンター エン・フレンテ 認知症コラム③

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~理想と現実の交差点:世界の福祉潮流と日本の「壁」

 

今、世界の福祉は「保護」から「共生」へと大きく舵を切っています。認知症があっても、リスクがあっても、その人が望む暮らしを継続する。この「パーソン・センタード・ケア(その人らしさを中心に置いたケア)」という考え方は、いまや国際的なスタンダードです。しかし、この理想を日本の現場でそのまま実現しようとすると、私たちは分厚い「現実の壁」に突き当たります。

 

1.「安全」という名の不自由

欧州の福祉先進国では、本人の意思や自由を尊重するために、ある程度リスク(転倒や徘徊など)を社会全体で許容する文化があります。対して日本では、家族や社会から施設へ求められるのは、何よりもまず「絶対的な安全」です。「怪我をさせてはいけない」「目を離してはいけない」という強い責任感は、時に本人の自由を制限せざるを得ない状況を生みます。理想のケアを提供したいと願うスタッフほど、この「安全第一」と「本人の自由」の板挟みになり、葛藤を抱えています。

 

2.制度のゆがみと「効率」の優先

現在の日本の介護保険制度において、現場は深刻な人手不足と、それに伴う業務の効率化に追われています。決められた人員配置基準と、年々複雑化する事務作業。限られた時間の中で、多くの方に一斉に食事や入浴を提供しなければならない現状では、一人ひとりの微細な声に耳を傾ける「ゆとり」を確保すること自体が、非常に困難なミッションとなっています。一対一の丁寧な対話が理想だと分かっていても、現実には「待たせないこと」「滞りなく終わらせること」が優先されてしまう。この構造的な問題が、理想の介護を遠ざける大きな要因となっています。

 

3.社会の寛容さと専門職の孤独

「認知症になっても安心して暮らせる街」というスローガンは美しく響きます。しかし、実際の地域社会では、徘徊や不穏な行動に対して厳しい目が向けられることも少なくありません。現場の担い手は、利用者の尊厳を守る最後の砦として奮闘していますが、社会の理解が追いつかない中でのケアは、時に孤独な闘いとなります。理想の介護が難しいのは、現場の努力が足りないからではありません。社会全体の価値観、制度の仕組み、そして人手不足という複合的な課題が、私たちを阻んでいるのです。

 

結びに:それでも「問い」を止めないために

「日本の現状では、理想はただの綺麗事だ」と諦めてしまうのは簡単です。しかし、世界の潮流を知り、日本の課題を直視した上で、それでも「目の前の利用者に何ができるか」を問い続けること。そこにこそ、これからの福祉を担う私たちの真の価値があるのではないでしょうか。完璧な理想は実現できなくても、昨日より少しだけその人の「声」に近づく。制度や環境の厳しさを言い訳にせず、かといって自分たちを責め過ぎず。この葛藤し続ける姿勢こそが、いつか日本の福祉を形作る新しい力になると信じています。

 

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